●胸痛

Q12  
 20才男性、身長175cm 、体重55kg 、4年程前よりときに胸痛(左が多いが、ときに右のときもあった)があります。数時間〜1週間ぐらい続き、体を動かした時に息苦しいこともあります。
 2日前、歩行中に左胸が痛くなりました。昨日から動いた時少し息苦しく感じます。 このまま様子をみてよいでしょうか。

 
A12  
 数年前より繰り返す胸痛ということ、呼吸困難を伴うこと、また、若い長身やせ型の男性であることより、自然気胸である可能性が高いと思われます。さらに、この人の場合問題なのは、以前右胸部痛もあったとのことで、両側に気胸のおこる可能性があります。そのときは急激な呼吸不全をきたすおそれがあり、治療を急ぐ必要があると思われます。

 自然気胸の原因は、図1に示すように、肺表面(多くは肺尖部にある)現局性の気腫性のう胞(bulla,bleb と称される)の破綻(はたん)によって発症します。その結果、胸腔内に空気が入り、肺が縮んでしまいます。発症は20 才代が最も多く、10才代〜30才代で全体の80%をしめ、また、男女比は8:1 と男性に多く、その特徴としては、この患者のように長身でやせ型の人が目立ちます。


《処置》

 軽症の場合、安静により軽快することもありますが、多くの場合、胸腔にたまった空気を排出させ(脱気)縮小した肺を再膨張させる必要があります(多くの場合入院が必要です)。また、このままでは再発率がかなり高い(30 %以上といわれています)ため、外科的に気腫性のう胞を切除する手術(最近では胸腔鏡下手術が一般化し、手術侵襲も軽減されています)が必要です。

《鑑別疾患》

(1)心疾患
 心筋心膜炎=カゼ症状が前ぶれとして現れる。体位や呼吸で痛みが増強する。
 虚血性心疾患(狭心症.心筋梗塞)=若年者では特殊な状況(家族性高コレステロール血症、川崎病の既往等)以外はまれ。

(2)大動脈
 解離性大動脈瘤(マルファン症候群以外は若年者ではまれ)。

(3)肺・胸膜
 肺炎・胸膜炎(発熱、咳、喀啖)

(4)胸壁
 帯状疱疹、外傷による骨、筋の痛み。

 

 

 

 

 

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