数年前より繰り返す胸痛ということ、呼吸困難を伴うこと、また、若い長身やせ型の男性であることより、自然気胸である可能性が高いと思われます。さらに、この人の場合問題なのは、以前右胸部痛もあったとのことで、両側に気胸のおこる可能性があります。そのときは急激な呼吸不全をきたすおそれがあり、治療を急ぐ必要があると思われます。
自然気胸の原因は、図1に示すように、肺表面(多くは肺尖部にある)現局性の気腫性のう胞(bulla,bleb
と称される)の破綻(はたん)によって発症します。その結果、胸腔内に空気が入り、肺が縮んでしまいます。発症は20
才代が最も多く、10才代〜30才代で全体の80%をしめ、また、男女比は8:1
と男性に多く、その特徴としては、この患者のように長身でやせ型の人が目立ちます。
《処置》
軽症の場合、安静により軽快することもありますが、多くの場合、胸腔にたまった空気を排出させ(脱気)縮小した肺を再膨張させる必要があります(多くの場合入院が必要です)。また、このままでは再発率がかなり高い(30
%以上といわれています)ため、外科的に気腫性のう胞を切除する手術(最近では胸腔鏡下手術が一般化し、手術侵襲も軽減されています)が必要です。 |
《鑑別疾患》
(1)心疾患
心筋心膜炎=カゼ症状が前ぶれとして現れる。体位や呼吸で痛みが増強する。
虚血性心疾患(狭心症.心筋梗塞)=若年者では特殊な状況(家族性高コレステロール血症、川崎病の既往等)以外はまれ。
(2)大動脈
解離性大動脈瘤(マルファン症候群以外は若年者ではまれ)。
(3)肺・胸膜
肺炎・胸膜炎(発熱、咳、喀啖)
(4)胸壁
帯状疱疹、外傷による骨、筋の痛み。
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