●めまい・失神

Q13  
 陸上部に所属していますが、全力疾走後に一瞬、目の前が暗くなったことがあります。
これは、どんな症状なのでしょうか。(高校男子)

 
A13  
 一時的に脳の血流が低下することによる症状です。眼前暗黒感ですむこともありますが、一時的に意識を失う(失神)こともあります。多くは冷汗や吐き気を伴います。


《原因》

(1)血管迷走神経反射
 立位か座位でおこり、激しい運動、精神的ショック、疲労、疼痛などが誘因となります。 運動中には交感神経が興奮し、心拍数の増加と血圧の上昇がおこりますが、運動を突然中止すると、心臓の働きを抑制する迷走神経が強く働きすぎて徐脈と低血圧がおこるものです。

(2)起立性低血圧
 起立姿勢を続けたときや、強い運動後の入浴時に起こります。立位では血液が下半身に貯まるため普通は末梢血管が収縮し、血液が心臓にかえるのですが、その働きが弱くておこるものです。

(3)心臓性失神
 不整脈が原因の場合、Adams- Stokes 症候群と呼ばれ、突然死となる危険があります(図1)。体位と関係なくおこり、極端な頻脈あるいは、徐脈のため有効な心拍出量が維持できなくなります。頻脈性のものに心室頻拍や心室細動があります。心室頻拍は心拍数が毎分140〜220で、心室細動に移行することがあります。心室細動は、そのまま死にいたるもので、脈が触れなくなり呼吸が止まります。緊急の心肺蘇生処置が必要です。徐脈性のものには洞停止や房室ブロックなどがあります。洞停止は、心臓のペースメーカーである洞結節から電気刺激が出ない状態で、房室ブロックは、心房から心室への電気の伝導が途絶えた状態です。

《処置》

(1)仰向けに寝かせ、下肢を挙上し心臓への静脈還流を増加させる。(図2 ) 
(2)身体を締め付けている衣服をゆるめる。
(3)脈拍、呼吸、血圧を確認する。失神発作の状況から心臓性失神が疑われた場合、すぐに医療機関に搬送する。
  このとき心肺蘇生法が必要なことが多い。
(4)失神では意識障害が数分以上続くことはない。回復しないときは他の原因が考えられ医療機関での処置が必要。

《予防》

(1)問診で失神の既往がある場合、メディカルチェックが必要。
(2)ウォーミングアップを十分に行う。
(3)しばらくスポーツをしていない場合は、いきなり強い運動はしない。

 

 

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