関節脱臼

Q19  
 バレーボールの試合中、アタック時に右肩関節の脱臼を起こし、近医で整復固定を受けました。その2年後、再度試合中に脱臼を起こしました。肩関節脱臼時の現場での応急処置について教えて下さい。(高校男子)

 
A19  
 肩関節は最も脱臼の起こりやすい関節です。肩関節の関節包は比較的ゆるく、ゆとりを持つため、肩関節は特に不安定な構造を示し、どちらの方向にも動かせる最も自由度の高い関節です。その分、力が加わったときに抜けやすいという特徴(弱点)があります。肩関節には肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節の三つの解剖学的関節と上腕骨と烏口肩峰靱帯の間、肩甲骨と胸郭の間に二つの機能的関節があります。(図1)いわゆる「肩」と呼ばれる部分は肩甲上腕関節を指し、「肩が抜けた」というような場合は、肩甲上腕関節の脱臼を意味します。

 肩の脱臼はボールを投げようとして振りかぶっているときなど、肘が身体から離れているときに腕を後ろに引かれるような動作でよく起こります。固定期間が短かったり、固定方法が悪いと90 %以上の人が再発(再脱臼)し、反復性(習慣性)脱臼の原因になります。関節が外れかかったが、脱臼に至らず、筋肉の力で元に戻ったような場合は亜脱臼と呼ばれます。 関節は変形していない場合が多いのですが、軽く考えて見過ごしてしまうと、同じダメージを受けた時、一気に外れることがあります。



図1 肩周辺の骨

 

《処置》
(1)肩鎖、上腕骨、肩甲骨を触ってケガの部位を確認する。
(2)臼の場合は直ちに救急病院に連れていき、専門医に整復してもらう。
(3)資格あるトレーナーが脱臼整復を行う時は、一度試みて整復できない時は直ちに
  専門医に紹介する。
(4)初回整復の固定が大切である。若い人では3 週間以上の固定が必要。(図2)
(5)受傷後、半年間は無理なスポーツは中止する。
(6)十分な肩甲帯の筋力トレーニングを行う。

《予防》

 再脱臼の予防・対策としては、初回脱臼整復後の固定期間、スポーツ復帰までの期間を十分にとり、その間に肩甲帯の筋力トレーニングを行うことが大切です。脱臼整復時に神経や血管を傷つけることがあり、初期治療は専門医に委ねることが最もよい方法です。

《鑑別疾患》

 肩鎖関節脱臼、上腕骨骨折、肩甲骨骨折、腱板断裂、インピンジメント症候群

 


図2 固定の方法

 

 

 

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