鵞足炎(がそくえん)

Q28  
 以前はマラソンなどにも出場していましたが、最近走ると右膝が痛くなり、思うように走れません。鵞足炎と言われてしばらく休んだりもしましたが、なかなか治りません。できれば、レースに参加したいと思っているのですがなんとかならないものでしょうか。(22才男性)

 
A28  
 右膝の内側の鵞足(がそく)部から大腿屈筋群(膝を曲げるときに使う筋肉で大腿部の後ろの筋肉)にかけて痛みがあり(図1・図2参照)、膝の不安定性や半月板など、その他の損傷を示す徴候がないことから、鵞足炎(がそくえん)と診断できます。

 鵞足は、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はくきん)、半腱様筋(はんけんようきん)が腱となり膝の内側で脛骨の上部に付着している部分です。鵞鳥の足のような形をしているところから、こう呼ばれています。(図2参照) 

 鵞足炎は、この鵞足腱や鵞足包(鵞足と内側側副靱帯の間にある滑液包)が炎症を起こしている状態です。陸上競技やサッカーの選手に多く、ランニング動作で脚を後ろに蹴り出す時やサッカーのキックで蹴り出した脚を減速させる時などに、過度の負荷がかかったり、鵞足と内側側副靱帯とがこすれあったりして起こります。ウォーミングアップ不足や、急に長い距離を走ったり使いすぎたりということが原因としてあげられますが、X脚(膝をまっすぐにそろえて立つと足首の内側にすき間ができる)や回内足(着地時に足が外がえしになる)などの骨格異常や練習場所(アスファルト、坂など)にも起因しますので、注意してください。

 

 


《処置》

・痛みが強い時は、患部に消炎鎮痛剤などをぬり、安静にする。(少し痛みがとれた時点で練習を再開しがちですが、
 すぐに再発するので十分に安静期間をおき、その間はランニング以外のトレーニングで補強する。)
・大腿部のストレッチングを十分に行い、筋肉の緊張をほぐし、鵞足にゆとりをもたせるようにする。
・痛みが発生した直後(運動直後)は冷やすが、慢性的な痛みには患部を温め(温熱療法)血液循環をよくする。
・X脚や回内足が原因の場合、シューズの底の内側を高くする方法もある。(この場合専門家に相談した方がよい)

《予防》

(1)練習前後のストレッチングを十分行う。(特に大腿屈筋群)
(2)練習直後はアイシングを行う、その後は患部を温める。
(3)ランニングの距離は徐々にのばすようにする。
(4)練習場所にも注意する。(土のグラウンドや平らなところを選ぶ)

《鑑別疾患》

 腸脛靱帯炎(膝の外側)、膝蓋靱帯炎(膝の前方)

 

 

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