●現場における救急処置

Q3  
 もし練習中や試合中に競技選手が倒れた時など、いざというときに的確な対処ができるように救急法について教えて下さい。

 
A3  
 救急蘇生法は、医師以外の人が行ってよい一次救命処置と免許を有する医師が行う二次救命処置に分かれています。医師以外の人が行ってよい一次救命処置は俗に心肺蘇生法のABCと呼ばれ、(A)Air way :気道確保、(B)Breathing:人工呼吸、(C)Circulation:心臓マッサージ、から成り立っています。ドリンカー曲線(図1)から、呼吸が急にとまってしまっても2分以内に人工呼吸を行えば90%近い確立で救命できることがわかります。これが呼吸停止後4分以上何もせずにいると、救命の確立は50%以下に減ります。このため、最近厚生省は一次救命処置の国民への教育に力を入れています。この機会に覚えましょう。

 

《処置(手順)》
 まず、意識の確認、呼吸の確認、脈拍の確認から患者の意識状態、呼吸状態、循環状態がわかります。呼吸がなければ人工呼吸、脈拍が触れなければ心臓マッサージを開始します。 次の手順で行って下さい。(図2参照)

 

 



図1 ドリンカーの曲線

呼吸が止まってから、人工呼吸を始めるまでの時間と、生命を救える確率。
呼吸が急に止まってしまっても、2 分以内に口対口人工呼吸を行えば、90%近くの人を救命できますが、3 分後では75 %、4 分後では50 %、5 分後は25 %と、時間がたつにしたがって救命できる率が減っていきます。

 
1 意識の確認 (1)倒れた人の近くで大声で“だいじょうぶですか、だいじょうぶですか”と呼びかけます。
(2)反応がなければ、肩をゆすったり、ほほを叩いたり、皮膚をつねったりして刺激を加えます。
(3)これらの反応にまったく応えず、意識がなければ近くにいる人に“だれか来て下さい、
 手伝って下さい”と応援を求めます。また『119 番』に電話をして救急車を呼びます。
(4)患者をあおむけに寝かせます。
2 呼吸の確認 (5)気道を確保して、呼吸する音が聴かれるか、胸壁運動(呼吸に伴う胸の動き)が見られるか
 などにより自発呼吸の有無を確かめます。
(6)自発呼吸がなければ、人工呼吸を開始します。
3 脈拍の確認 (7)頚動脈・大腿動脈などを触れて脈拍の有無を確かめます。 
(8)脈拍が触れなければ、心臓マッサージを開始します。
4 人口呼吸・
 心臓マッサージ
○1人で行う場合・・・心臓マッサージ15 回、人工呼吸2回の割合で続けて行います。
○2人で行う場合・・・1人は心臓マッサージを、もう1人は人工呼吸を担当し、心臓マッサージ
             5回、人工呼吸1回の割合で行います。
 
 この手順で時々意識状態、呼吸状態、脈拍の状態を確認し、もし患者の状態が回復しているなら患者の右側にすわって状態を観察します。決して患者からはなれてはいけません。救急隊が到着するまで救急処置を続けます。決してあわてず、どのような場面でも自信をもって正しい処置ができるようにして下さい。

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図2 救急蘇生法の手順

1)倒れている人の右側にひざをつく。

2)まず意識の有る無しを確認する「大丈夫ですか?」と言いながら肩を叩く。

3)意識がないとき‥「だれかきて」と大声で叫ぶ。

4)気道を確保して呼吸の有る無しを確かめる。
  気道の確保 ‥ 左手を額に右手であごを上に引っ張りあげるように頭を後ろに傾ける。 
  呼吸の確認のやり方 ‥ 同時に左耳を口に近づけて呼吸音を聴き、目で胸の動きを見る。


5)呼吸がなければ、右手であごを引き上げたまま、すぐさま左手で鼻をつまみ、口から2回続けて息を吹き込み
 胸が膨らむのを確かめる。胸の膨らみがない場合、気道の確保が確かなら異物による気道狭窄を疑う。

6)左手で気道の確保を維持したまま頚動脈の拍動を触れる。
 頚動脈拍動の触知法‥まず右手指先にて“のどぼとけ”(甲状軟骨)をふれ、次いで指先を外側にずらして
 頚部前方の筋肉との間に置き、頚動脈の拍動を触れる。

7)頚動脈拍動が触れない場合、「救急車(119番)を呼んで!」と叫んで、心臓マッサージを開始する。

8)1.2.3.4.5 ………12 13 14 15と声を出しながら心臓マッサージを行い、15回に2回の割合で人工呼吸を行う。  心臓マッサージは、80〜100/分の割合で行う。

※手の位置の決め方
 右手中指を肋骨下縁に添って中心部まで動かし、中心の切れ込み(剣状突起と胸骨との接合部)を確認する。右手中指をそのままにして左手の関節部を右手示指に添えておき、次いで右の手のひらを左手の上に置く。左手の指の間に右手の指を入れ、両肘をしっかりと延ばして体重をかける。

 

 

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