こむらがえり

Q35  
 陸上部に所属する高校生男子です。練習した日の夜、ベッドの中で、たびたび「こむら返り」が起こるのですが、何かよい予防法はないのでしょうかる危険性はどのくらいあるのですか。また、未然に防ぐにはどのようにすればよいのでしょうか。

 
A35  
 “こむら返り”は英語で“muscle cramp ”(筋肉のけいれんの意味)といい、部位を固定する意味の単語は使われていませんが、我が国においては、特によく筋肉のけいれんの発症する部位、すなわち腓(こむら:すねのうしろ、ふくらはぎの部分)の名をとって、“こむら返り”と呼ばれています。“muscle cramp ”の原因としては、

  1.体内の水・電解質異常によるもの(カルシウムやマグネシウムの不足・低下など)
  2.先天的な筋肉の酸素欠損症といった疾病が原因であるもの
  3.神経障害によるもの(薬物中毒、局所てんかん、里吉病など)
  4.その他、糖尿病や肝障害によるもの

など様々ですが、ここではスポーツの後、一般的に起こる日常皆さんが、一度は経験したことのあるこむら返りに絞って解説することにします。

 こむら返りの病態は、腓腹筋というふくらはぎの筋肉の不随意性(無意識下での)短縮であり筋肉が硬く収縮し、随意的(意識的)弛緩させることができなくなり、強い痛みが生じた状態を言います。

 

《処置》

(1)運動の前後における筋けいれん
 短距離ランナーが疲れているわけでもないのにスタート直後にこむら返りを起こすことがあります。これは、スタート前の極度の緊張によって大脳運動中枢が興奮しすぎ、本人の意思とは無関係に筋肉が勝手に収縮してしまったため起こります。発症したら、ふくらはぎの筋肉を軽く押さえ、足関節を背屈させます。(図1)

 また、極度の緊張を柔らげるための軽いウォーミングアップと、過緊張しないようにする精神的トレーニングを常日頃から心掛けることが必要です。

 

(2)水中または夜間の筋けいれん
 冷たい水の中では、皮膚の知覚が低下しており、加えて足関節底屈(尖足位)に対する抵抗が少ないことから関節の深部知覚や腱・筋のセンサーが効かず、筋肉の収縮にブレーキが効きにくくなり、こむら返りが起こりやすい状態になっているといえます。また、夜間では布団の重みや重力により、やはり足は尖足位となり、こむら返りが発症しやすい状態になっています。

 

(3) ハードな運動後の筋けいれん
 サッカーやマラソンなど、運動量の多いスポーツの最中あるいは、スポーツ後に起こるこむら返りは、多量の発汗により生じた脱水や電解質異常によることがしばしばです。予防としては、運動の前後でスポーツドリンクなどにより水分と塩分を十分に補給することが重要です。運動後の緊張を柔らげるためのマッサージも奨励されます。その他、激しい運動中では、特に日頃の練習量の少ない初心者において、呼吸数が増え(過換気となり)、体内の炭酸ガス分圧が低下することによりテタニーと呼ばれる筋肉のけいれんが生じることがあります(多くは四肢全ての筋肉のけいれんを自覚します)。この場合は、紙袋を口にあて、1〜2分呼吸すれば元に戻ります。

 

 

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