
日本の古式泳法の中に50メートル程度の潜水と水底歩行があって、戦国時代には城攻めの際に堀を渡るのに用いられたという。
50メートルの潜水時間は約1分30秒だから、一般人でも少し鍛錬すれば十分に可能である。ギネスブックには35分という長時間潜水が記録されている。吸息運動を一時中止しているだけで肺胞や末梢組織でのガス交換は十分におこなわれている。
長時間の潜水には、むしろ意志気力が必要である。息を止めていられる時間を体力テストに用いた人がいたが、これは精神力(意志)を試すテストになっても、生理的なテストにはならない。精神力の限界は生理的限界とは無関係だからである。
海女は5〜7分間も海底で仕事をする。これも、鍛錬の結果、息を止めたり吐いたりすることに慣れているからである。しかしそれと同じに、無呼吸状態の苦しさに耐えることのできる忍耐力を必要とするだろう。
潜水も水底歩行も、移動しながら、ほんの少しずつ息を吐き続けていくのがコツである。
著者 富山県国際健康プラザ・健康スタジアム館長 永田 晟 (呼吸の奥義より)
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