第1話
アインシュタインは鉄棒超ヘタ



藤子・F・不二雄先生は映画の原作となった大長編ドラえもんを十七話創作されています.大長編ドラえもんはすべて月刊コロコロコミックに掲載された作品を文庫本にまとめたものであります.しかしながら,文庫化された大長編ドラえもんには,月刊コロコロコミックには登場していない,武田鉄矢の作詞になる歌詞が二ページにわたって紹介されています.

大長編ドラえもん全十七巻の中で,武田鉄矢の歌詞の登場しない作品は四巻,五巻,七巻,十七巻(作詞 高橋研)のみです.登場した歌詞のタイトルを巻数順に列挙すると以下のようになります.「ポケットの中に」「心をゆらして」「だからみんなで」「少年期」「友達だから」「時の旅人」「天までとどけ」「夢のゆくえ」「雲がゆくのは・・・」「何かいいこときっとある」「世界はグー・チョキ・パー」「さよならにさよなら」「私のなかの銀河」といったロマンティックで夢にあふれた作品ばかりといえます.

十四巻に登場する歌詞のタイトルは「世界はグー・チョキ・パー」であり,人間にはムキ・フムキがあると言った点を歌詞の中で指摘しております.具体的には,エジソン国語レイテン アインシュタインは鉄棒超ヘタ ラクダイ生といったフレーズが出てきます.こうした点は客観的な事実を提示されなくても,妙にあの二人であれば,多分そうであったことだろうと納得してしまいそうです.現実は全く逆である場合が決して少なくありません.例えば,評論家の立花隆氏が現在の姿から,中学時代に全国放送陸上競技大会で走り高跳びで堂々三位に入賞しているといった事実を想像できないと同じように.

 

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