1 21世紀のスポーツ振興の課題

 今日、スポーツは、年齢や性別を問わず多くの人々に親しまれているばかりでなく、様々な形で人々の生活の中に溶け込み、彩りを添えています。

 このことは、スポーツが人々を引きつける魅力を有するものであるとともに、体力の向上や健康の保持増進はもとより、人々相互の交流や自然との豊かなふれあいを実現するなど、現代社会を生きる人々の生活の充実に欠かせない意義を有するものとして、広く認められている証です。

 また、スポーツは、人間性の涵養、ことに、青少年の人格形成に果たす意義も大きく、さらに、活力あふれる社会形成にも大きく寄与するものです。社会環境が様々に変化している中で、今後ますますその重要性が増していくものと考えられます。

 これからのスポーツ振興にあたっては、このような状況やスポーツの持つ多様な意義や機能を十分踏まえ、本県のスポーツ振興の現状と課題を適切に把握することが必要です。そのうえで、21世紀の社会を展望し、県民の誰もが、生涯にわたって豊かなスポーツライフを送ることができるスポーツ環境の実現に向け、諸条件の整備に取り組んでいくことが重要と考えます。

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(1)生涯スポーツプラン推進の成果と課題

 富山県では、昭和60年に平成12年度までを計画年度とした生涯スポーツプランを策定(平成3年に改訂)しています。

 このプランは、平成12年開催の2000年国体の成功をその集大成として位置付け、スポーツ施設の整備や指導者の育成等を総合的かつ計画的に進め、「日本一のスポーツ県」の実現を目指したものです。

 具体的には、ア.児童生徒の体力、日本一 イ.県民スポーツ人口、日本一、ウ.2000年国体での総合優勝の3つの目標を掲げ、各種施策を積極的に推進してきたところです。

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ア 児童生徒の体力、日本一に向けた取組みでは

 
21世紀を担うたくましい児童生徒を育成するため、教科体育や運動部活動の充実、学校体育施設の計画的な整備などに努めるとともに、体力つくりノート「チャレンジ3015」の活用による運動好きな児童の育成などに取り組んできました。

 現在、児童生徒の体力・運動能力は、全体的に全国上位に位置しています。しかし、全国傾向と同様、体格の向上に比して、低下しつつある体力・運動能力の向上が大きな課題となっています。

 

《新体力テスト結果》 本県の測定結果と全国平均との比較(平成11年度)

 

 

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イ 県民スポーツ人口、日本一に向けた取組みでは

 地域スポーツや職場スポーツ・レクリエーション活動を推進し、県民の誰もがスポーツに親しむことができるようにするため、指導者の養成やスポーツリーダーバンクの拡充、市町村に対する社会体育専任職員の配置、学校体育施設開放の促進などに努めてきました。

 また、県民スポーツ大学校や夏季・冬季のスポーツレクリエーション祭などを開催し参加機会を拡充するなど、様々な施策に取り組んできています。

 県民スポーツ人口については、このような積み重ねにより、生涯スポーツプランが目標として掲げた80%を大きく上回っていますが、週1回以上、定期的にスポーツに親しむ人の割合は、40%弱にとどまっており、今後は、スポーツの生活化に向けた一層の取組みが求められています。

 

《県民スポーツ人口》  週1回以上運動・スポーツを行なう者の割合の推移

国・・・総理府世論調査(H6.9)による
県・・・県政世論調査による

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ウ 2000年国体での総合優勝に向けた取り組みでは
 
 合宿・遠征や強化指定チーム(選手)制度、科学的トレーニングの拡充、指導者の資質向上などにより優秀選手の育成・強化に努めるとともに、各種競技施設の整備などについて、計画的に進めてきました。

 その結果、男女総合優勝の栄冠を見事獲得し、県民に大きな感動と誇りをもたらし、県民のスポーツに対する関心も大いに盛り上がってきています。

 飛躍的に向上した競技力の維持・強化はもとより、競技施設の充実など国体開催による様々な成果を21世紀のスポーツ振興にいかに結び付けていくかが、これからの重要な課題の1つとなっています。

《2000年とやま国体総合優勝までの軌跡》  

(順位) 

  H元 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12
天皇杯 33 37 37 26 39 22 15 24 24 11
皇后杯 17 21 23 19 28 18 17 19 17

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(2)社会環境の変化とスポーツ振興の課題
 

 近年、高齢化や少子化の進行、科学技術の発達や情報化の進展、生活水準の向上や自由時間の増大、国際化の進展など、社会環境が大きく変化しています。

 このような変化は、県民のスポーツを取り巻く背景やスポーツニーズに様々な影響を及ぼしており、これらの状況に的確に対応した取り組みが求められています。

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ア 高齢社会の到来
 

 平均寿命の伸長により、人生80年時代を迎えています。

 ことに、富山県においては、全国を上回るスペースで高齢化が進行しており、少子化とも相俟って、平成22年には、4人に1人が65歳以上の高齢者が占める超高齢化社会を迎えます。

 少子・高齢化の進行にともない、生産年齢が減少し、高齢者の積極的な社会参加がこれまで以上に求められています。このことから、スポーツの果たす役割は、高齢者の健康や生きがいのある豊かな暮らしを支えていくうえで、今後、ますます大きくなっていくと考えられます。

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イ 少子化と学校完全週5日制の施行

 少子化による児童生徒の減少は、教員の減少や高齢化とも相俟って、運動部活動の停滞や開設種目の減少など、多様なスポーツニーズに対応した学校体育・スポーツの展開に様々な影響を生じさせています。

 一方、平成14年度には、学校完全週5日制が施行されることから、児童生徒のスポーツ活動の充実に向けた家庭や地域の役割がこれまで以上に大きくなっていくと考えられます。

 21世紀を担う児童生徒の心身の健全育成は、重要な課題であり、学校、家庭、地域が一体となった取り組みが求められています。

 

《高齢者人口・年少者人口の推移と将来予測》

国立社会保障・人口問題研究所
                               「都道府県別将来推計人口」より

高齢者人口(65歳以上)の割合 

(%)

  H元 H5 H10 H12 H17 H22 H27
本 件 14.5 16.8 19.7 20.6 22.5 24.8 28.5
全 国 11.6 13.5 16.2 17.2 19.5 22 25.2
年少者人口(14歳未満)の割合

(%)

  H元 H5 H10 H12 H17 H22 H27
本 件 18.1 15.8 14.4 14.4 14.1 13.8 13.3
全 国 11.6 16.7 15.1 14.7 14.3 14.3 14.2

 

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ウ 科学技術の発達と情報化の進展

 科学技術のめざましい発達は、生活に利便性や快適さをもたらしていますが、その一方で、日常生活における身体活動の減少が進行しています。

 この現象は、情報通信の発達や生産効率の一層の改善によってさらに加速することが予測され、慢性的な運動不足による生活習慣病の増加、また、その若年時発症などの問題がますます大きくなっていくと考えられます。

 このような問題の予防と改善に果たすスポーツの役割は大きく、心身ともに健康で豊かな生活を営んでいくうえで、今後、不可欠になっていくものと考えられます。

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エ 生活水準の向上と余暇時間の増大 

 科学技術の発達や情報化の進展などによる生活水準の向上や自由時間の増大などに伴い、生活のあり方を重視する意識や価値観の高まりから、人々のスポーツニーズが多様化・個性化しています。

 スポーツは、健康・体力の維持増進にとどまらず、人や自然との交流、自己実現の手段としてなど、一人ひとりの生活の中でそれぞれの個性やライフスタイルに応じて生涯にわたって親しまれるようになっていくものと考えられます。

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オ 国際化の進展

 社会の様々な分野で国際化が進んできており、スポーツの分野においても、大会やイベントなどを通じた国際交流が活発に行われています。

 本県においても、環日本海諸国を中心にスポーツ交流が行われていますが、世界共通の文化として、ことばの壁を越えて相互理解を深めることができるスポーツ交流の意義は、今後ますます高まっていくものと考えられます。

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(3)21世紀のスポーツ振興の課題

 生涯スポーツプラン推進の成果や社会環境の様々な変化から、21世紀の本県スポーツ振興の重要な課題は、以下に要約できると考えます。

高齢者、障害者を含む県民の誰もが、好みに応じたスポーツにいつまでも親しむことができる環境を整備し、スポーツの生活化を図るとともに、人や自然との豊かな交流を実現すること

 

国体を機に整備された施設、充実した指導者などの人材、強化された指導体制などを新たに再編整備し、向上した競技力の維持・強化を図ること

 

21世紀を担う児童生徒のスポーツ活動を充実し、心身の健全育成を図るとともに、生涯にわたってスポーツに親しんでいく基礎を培うこと

 

 このような取り組みを推進し、県民の体力の向上や健康の保持増進、明るい地域社会の形成、そして、活力あふれる県民生活の創造に寄与することが、このプランに課せられた使命と考えます。

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