●どうき・脈拍異常

Q10  
 1.トレーニングの終了後に時々胸が「ドクッ」とした感じがあり、脈をとってみると1拍ぬけているような印象があります。
  心配ないのでしょうか。
 2.サッカーの練習中に突然激しいどうきに襲われ、止まらなくなりました。その場にうずくまって息をこらえていたら
  突然なおりました。何が起こったのでしょうか。

 
A10  
 心臓は通常規則的なリズムで拍動していますが、時にリズムの乱れ、すなわち不整脈が発生することがあります。一口に不整脈といっても様々な種類と原因があり、放っておいても心配のない良性の不整脈から生命にかかわる危険な不整脈までその程度も様々です。したがってどうきや脈拍の異常を感じたら、症状の程度にかかわらず必ず専門医に相談し、きちんと診断してもらうことが大切です。不整脈の診断は症状を認める時に心電図を記録すること が必須ですが、実際にはどうきがいつ起こるか予測がつかないことが多く、診断に難渋することもしばしばあります。しかし、どうき症状の特徴から不整脈の種類をある程度推測することができます。

質問10.1 の症状は、「期外収縮」という不整脈でしばしばみられる症状です。期外収縮とは、規則的な心臓収縮リズムの途中で心房または心室が予定よりも早く収縮することであり、最も多くみられる不整脈です。一般にこの不整脈は心臓に重い病気がなければ症状があっても危険性はなく、心配することはありません。ただし運動中に増悪する期外収縮は要注意です。

質問10.2 の症状は、「発作性頻拍症」という不整脈でみられる症状です。これは心臓内に異常な電気回路が形成され、そこを刺激が速い速度でグルグルと回ることによって起こります。心房が頻拍の回路の一部となる「発作性上室頻拍」は比較的良性な頻拍で、後述する迷走神経刺激法によって自分で治すことができる場合があります。質問では「息こらえで治った」とありますから、発作性上室頻拍が強く疑われます。一方心室内に頻拍回路ができる「発作性心室頻拍」では生命に危険を伴う場合があります。いずれにしろ専門医による診断が必要です。

 

《処 置》

・どうきの原因について専門医による検査、診断、指導をうける。
・どうきを感じたときは、安静にして様子をみる。特に運動中にどうきを感じた場合は、ただちに運動を中止し、安静を保つ。
・安静にしていても軽快しない時は、すみやかに医師の診断を受ける。
・発作性上室頻拍と診断されている人は、どうき発作時に次の迷走神経刺激法を試みる。
 1 )息を吸い込んで喉をつめ力を入れる。(バルサルバ法)
 2 )冷たい水を飲む。
 3 )喉に指を入れて吐こうとする反射を起こす。(嘔吐反射)
 4 )首の側面にある頚動脈の拍動している部分を押さえる。(頚動脈マッサージ法)
 5 )息を止めて冷たい水に顔をつける。 

《予防》

(1) 過労、睡眠不足、喫煙を避ける。
(2) アルコールやコーヒーの過度な摂取を避ける。
(3)頻脈発作を有する人では、医師の処方による予防薬(抗不整脈薬)の服用を行う。

《鑑別疾患》

 先天性QT 延長症候群や心筋症、狭心症(若年者では川崎病の既往)など基礎心疾患を有する人は、危険な不整脈を伴う場合があり、循環器専門医による指導と治療が必要です。

 

 

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