野球肘

Q21  
 小学校2年から野球を始めました。サードの守備をしていましたが、1年前からピッチャーに転向しました。練習はほぼ毎日行っています。2か月前から投球時に右肘の痛みが時々ありましたが2〜3日練習を休むと痛みは治っていました。しかし、最近投球すると右肘が痛く、練習を休んでいますが痛みは続いています。いつまで休むとよいのでしょうか。(13歳男子)

 
A21  
 右肘は変形がなく、関節の動きも異常ありません。しかし、右肘の骨の内側と外側で筋肉の付着部を押さえると痛みがあります。また前腕を円に回す力に抵抗を加えると痛みがあります。いわゆる野球肘と考えられます。(図1)野球肘には筋肉付着部の関節外軟骨が傷つく場合と関節内の軟骨が傷つく場合があります。(図2)傷害軟骨の種類や程度によって、2〜3週間から数か月間の安静、時には2年間ほど投球動作を中止しなければなりません。正確な診断のためにレントゲン検査、MRI検査、CT検査が必要です。必ず専門医を受診してください。


《処置》

・痛む所をアイシングする。
・ストレッチングを行う。
・投球動作を中止する。
・2kgの軽いダンベルを用いた上肢の筋力トレーニングを行う。
・投球動作中止期間はランニングや筋力増強訓練など全身の体力作りを行う。
・関節外軟骨の障害なら2 〜3週間の安静後、痛みが取れればシャドーピッチングから徐々に投球を始める。
・関節内軟骨の障害なら軟骨の修復が完了するまで投球動作を中止する。
・時には他のスポーツへの変更が勧められることもある。

《予防》

 少年期の軟骨は傷つきやすいが修復も早く、痛みは必ずしも傷害の指標にはなりません。野球肘の原因はオーバートレーニングにあります。コーチ、監督の責任が問われる可能性があり、傷害予防対策には十分な配慮が必要です。指導者に対する注意点をあげておきます。

 (1)球数を一日50 球、週300 球にとどめる。
 (2)連投をさせない。
 (3)投手、捕手は2名以上養成する。
 (4)シーズンオフを設定する。
 (5)練習は一日2時間以内にする。
 (6)練習前後のウォーミングアップとクーリングダウンを十分に行う。
 (7)投手、捕手は定期的メディカル・チェックを受ける。

《鑑別疾患》

 リトルリーグ肘、肘離断性骨軟骨炎、テニス肘、野球肘、など。

 

図1 野球肘 図2 野球肘での傷害軟骨

 

 

 

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