●軽度の脳震盪

Q8  
 試合中、選手が相手と衝突して仰向けに転倒し、後頭部を強打しました。頭痛を訴えながらも本人は試合に出たいと言います。このような場合、試合に復帰させてよいでしょうか。(コーチより)

 
A8  
 この場合は「軽症の脳震盪」と思いますが、頭痛を訴える時は絶対に競技させてはいけません。ことに頭を強打したときは、意識が正常に見えても、しばらく様子(経過)を見ることが必要です。すなわち、頭部外傷は時間とともに症状が悪くなる場合は生命の危険があるからです。

 



《現場での判定の流れ》(図1)

 脳震盪には、意識喪失の無いもの(軽度)から、5 分以上の意識喪失を認めるもの(高度)もあります。

 また、意識障害のレベルにも、何となくぼんやりしている程度から、名前を呼んでも返事をしないものまで種々の程度差があります。受傷直後から意識の醒めないときや(脳挫傷)、徐々に意識の状態が悪くなるとき(頭蓋内血腫疑)は救急車で病院へ移送して下さい。


《受傷直後のチェック》(表1)

 スポーツの現場では、競技への復帰を含め素早い対応が望まれますので、まず表1(ラグビー協会‥安全対策マニュアル)の要領でチェックして下さい。平衡機能の検査には閉眼片足立ちテスト(30秒以上)が便利です。

 チェック項目の一つでもできないときはスポーツを中止させ、その日のうちに脳神経外科医の診察を受けさせましょう。


《現場復帰の条件》

 脳振盪のあと、いつから練習を開始してよいかという基準は現在ありません。脳神経外科医の診断・許可を得て下さい。

 参考までに、日本ラグビー協会は3週間の休養を要すると決め、日本ボクシングコミッションは試合終了後2 週間を経過しなければ次の試合に出場できず、TKO 敗されたボクサーは45日間の出場停止が規定されています。

 また、技術レベルが低いほど脳のダメージが大きく、ことに頭部外傷を繰り返した選手は傷害が累積されますので、より長期の休養を必要 とします。

 さらに、3週間がたっても頭痛や身体の不調がある場合は、慢性硬膜下血腫の疑いがありますから必ず診察を受けさせましょう。

 

 

表1.頭部打撲(脳振盪を含む)あるいは頸部
  損傷を疑う場合のチェック事項

 (倒れているプレーヤーそばで、倒れたままで
 チェックする)

 1(1)君の名前は?
  (2)今日は何月、何日、何曜日かいってごらん 
  (3)今、何をしているのかわかる?
  (4)相手チームとグラウンドの名前をいって
   ごらん 
  (5)目を開けたり、閉じたりしてごらん

 2(1)頭が痛かったり、吐き気がする?
  (2)(指を1本、眼前に出し)はっきりみえる? 
  (3)手や足がしびれていない?
  (4)腕を曲げてごらん、伸ばしてごらん
  (5)足を曲げてごらん、伸ばしてごらん

 3(1)立って膝の屈伸を2、3回してごらん
    (自力で)
  (2)少し(2〜3)走ってごらん 
        
(日本ラグビー協会:安全対策マニュアル)

 

 

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